北海道芸術学会第41回例会

■プログラム
[挨拶とお知らせ]13 時00 分〜13 時10 分

[研究発表]13 時10 分〜13 時50 分
「距離(Distance)と眺望(Perspective)―E・ブロウの「距離」概念に関する一試論」
 郡田 尚子 氏(北海学園大学)

[講演]14 時00 分〜15 時00 分
「北海道の博物館・美術館紹介 紋別市立博物館・まちなか芸術館」
 小林 健一 氏(紋別市立博物館・学芸員)

(終了後、オンラインにて懇親会)

研究発表要旨「距離(Distance)と眺望(Perspective)――E・ブロウの「距離」概念に関する一試論」
郡田尚子(北海学園大学)
イギリスの美学者E・ブロウが1912 年に発表した概念”Psychical Distance” (以下「心理的距離」と訳す)の由来については、これまでF・シラーの文芸批評からの影響が論じられてきた。本稿は、より直接的影響関係としてブロウの義理の母であり国際的俳優であったE・ドゥーセの存在があったことを彼女の蔵書目録等から跡付ける。またドゥーセが目を通していたF・ニーチェの著作における”Perspectivism”(「眺望主義」)と「心理的距離」との関連を、ブロウが晩年に”Italian Perspectives” (「イタリア人の眺望」、1934 年刊)という講演にて示した、イタリア人のものの見方(眺望)を明らかにしながら、イギリス人も含め彼らを規定してきた人々の眺望も相対化する在り方から考察する。それにより論者は、個人のみならず共同体の抱える眺望からも距離をとることの可能性をブロウが提示したことを論じる。